月: 2022年12月

  • 2022年12月20日:Inge Daniels先生上映会を開催しました

    12月20日、オックスフォード大学のインゲ・ダニエルズ(Inge Daniels)教授 によるプロジェクトDisobedient Buildingsの成果である20分間の映像とトークを行い、計14人が参加しました。日本をフィールドとしてこられた人類学者のダニエルズ教授が、上映のために日本語字幕をつけてくださいました。

    https://www.disobedientbuildings.com/the-team

    “She Waves at Me – a film about aging bodies in aging blocks of flats(注) in Central London.” by Inge Daniels
    『「彼女は私に手を振るんだ」ーーロンドン中心地の老朽化したアパートの高齢化する身体』

    日時 2022年12月20日 (火)13:30〜15:00 
    場所 6号館302号室

    今回のイベントは、初めて制作した映像作品を上映し、率直な意見を伺いたいという来日中のダニエルズさんの申し出により実現しました。Disobedient Buildingsというプロジェクト名には二つの意味があります。一つには、建物が思い通りに機能せず、不服従だということ。もう一つには、住む人々も言いなりにならず、もの申すということ。

    1960年代まで、英国ではどのような階層の人でも、良い住宅に住むことが当然の権利だと考えられていました。このため、名の知られた建築家に依頼した公営住宅が建てられたりしました。しかしサッチャー政権の時代から、こうした住宅であっても収益を上げる方向に政策が変わっていきます。現在では、建物の間にあった緑地帯にも所狭しと建物が建てられ、子供が遊ぶ場もなくなりつつあるとダニエルズさんは言います。1960年代には最新のモダニズム建築として建てられた公営住宅も老朽化が進み、現在は高齢者となった方々が、思うように動かなくなった体と折り合いをつけながら生活しています。

    参加者からは、こうした背景を聞いた上でも、映像はコラージュのように美しい自然や室内のイメージや、インタビューされた方の落ち着いた語りと内容が印象的だという声が上がりました。ダニエルズ教授は、イギリスではこの地区が荒れている面ばかりがメディアで取り上げられ、スティグマ化されているため、対抗するためにこうした映像を選んだと言います。何時間もの録画映像があるので、また別の内容や側面でもう一作作りたい、とのことでした。

    初めての映像作品ということで緊張した面持ちでしたが、学部生から名誉教授まで、さまざまな方の活発な意見交換ができて、とても和やかな表情になりました。本を書いても感想を聞くことはほとんどないけれど、映像だとその場で観た方とやり取りができると言われました。その言葉どおり、上映直後から終了時刻まで途切れることなく質問とコメントがあり、熱のこもった議論が行われました。

  • 2022年12月15日:社会人類学年報48号を刊行しました

    2022年12月15日、東京都立大学社会人類学会編『社会人類学年報』48号を刊行しました。

    社会人類学年報48号目次

    河野 正治 食物展示の意味をずらす技法:ミクロネシア・ポーンペイ島の儀礼実践にみる価値転換と創造の萌芽
    河合 洋尚 なぜいま人類学が景観を論じるのか:景観人類学のマテリアル・ターンを再考する
    小田 亮  [講演録]「真正性の水準」の発見と二重社会論:あるいは武器としての人類学
    清水 拓野 [研究動向]中国戯劇人類学の特徴と展開:中国本土研究者の研究動向を中心として
    石田慎一郎 [新刊紹介]千葉正士全集編集委員会編・大塚滋編集『人間と法――法主体の探究』
    田井みのり [新刊紹介]佐本英規『森の中のレコーディングスタジオ――混淆する民族音楽と周縁からのグローバリゼーション』
    郝 雅楠  [新刊紹介]藤野陽平・奈良雅史・近藤祉秋(編)『モノとメディアの人類学』