2022年10月28日:「海域アジア・オセアニア研究プロジェクト東京都立大学拠点キックオフミーティング」を開催しました
2022年11月7日
2022年度より人間文化研究機構「海域アジア・オセアニア」プロジェクトの拠点の1つが、東京都立大学人文科学研究科に設置されました。社会人類学教室を中心とし、今後6年間活動を続けていくことになります。プロジェクトの開始を記念して、2022年10月28日に下記の内容でキックオフミーティングを実施しました。なお、このイベントは東京都立大学南大沢キャンパスの会場とウェブ会議システム(Zoom)を併用するハイフレックス方式で行われ、計29名(対面14名・オンライン15名)が参加しました。
日時:2022年10月28日(金)17:00-19:00
プログラム:
17:00-17:05 開幕の辞 綾部真雄(東京都立大学)
17:05-17:30 趣旨説明 河合洋尚(東京都立大学)
「トランスネシア研究プロジェクトの概要と研究意義について」
17:30-18:00 発表① 横田浩一(人間文化研究機構/東京都立大学)
「潮州からみる海域アジア:想像/創造されるカテゴリーとはみだす領域」
18:00-18:30 発表② 河野正治(東京都立大学)
「フロンティアとしての島嶼世界:ミクロネシアにみる異質な人々の馴化・交錯・並存」
18:30-19:00 討論
19:00 閉幕の辞 山口 徹(慶應義塾大学)
「趣旨説明」(河合洋尚)では、東京都立大学拠点研究を「トランスネシア・プロジェクト(略称:トラネシ)」と命名すること、海域アジア・オセアニア研究プロジェクトの意義として海域エリアにおけるボーダーレスな人・モノ・情報などの移動を検討していくことが述べられました。具体的な事例としては、客家やオセアニアのアジア系などを取り上げ、従来の空間区分では必ずしも十分に考察の対象となってこなかった地域間のネットワークや人々の移動や文化的な融合などを視野に入れる重要性を示しました。
次に、「潮州からみる海域アジア:想像/創造されるカテゴリーとはみだす領域」(横田浩一)では、地域を越えた人の移動およびカテゴリーの想像/創造という観点から潮州を対象に台湾への移住者のエスニシティや潮州料理の形成過程などの事例を紹介しました。そして、地域を越えた人の移動や文化は特定の地域や人々に注目しているだけでは見えてこないため、地域や集団で分断せずに人やモノ・情報の移動とネットワークの形成がもたらすエスニシティや文化の変容を詳細に分析する必要があることを示しました。
最後に、「フロンティアとしての島嶼世界:ミクロネシアにみる異質な人々の馴化・交錯・並存」(河野正治)では、西洋文化との接触や英語圏との関係に比して、アジアとの関係が軽視されてきたことを批判する近年の歴史研究の動向に触れながら、アジアのオセアニア系とオセアニアのアジア系の現状を捉える枠組みについて検討しました。さらに、近年注目されているオセアニアへの中国の進出とアメリカの覇権争いという国際政治のマクロな構図では捉えられないミクロな生活実践、すなわち多様なアジア系の人々がオセアニア住民とそれぞれの距離感をもって暮らす現場の雑多性に注目する必要があることを論じました。
最後に総合討論が行われ、「海」というキーワードから今後どのように本研究プロジェクトを発展させるのかなど、活発な議論が展開されました。
今後は連続セミナーなどの形で活動を続けていく予定です。
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